胃カメラで「異常なし」なのに胃が痛い。そんなことってある?
「胃が痛くて胃カメラを受けたけれど、異常はないと言われました。それでもまだ胃が痛いんです。」
診察をしていると、このような相談を受けることがあります。せっかく胃カメラまで受けたのに「異常なし」と言われると、安心する一方で、「じゃあ、この症状はいったい何なんだろう」と少しモヤモヤしますよね。
結論からいうと、胃カメラで明らかな異常がなくても、胃痛や胃もたれなどの症状が続くことはあります。 その代表的な病気のひとつが「機能性ディスペプシア(FD)」です。日本消化器病学会でも、胃カメラなどで胃がんや胃潰瘍といった明らかな病気が見つからないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれなどが続く病気として説明されています。
胃カメラで「異常なし」とはどういうこと?
胃カメラは、食道・胃・十二指腸の粘膜を直接観察できる検査です。胃がんや食道がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎など、粘膜や形に現れる病気を見つけることには非常に優れています。
一方で、人間の胃は単なる「袋」ではありません。食事が入ると胃が広がり、食べ物を細かくしながら十二指腸へ送り出します。また、胃酸などの刺激をどの程度「痛い」「苦しい」と感じるかにも個人差があります。
そのため、胃の粘膜を見て大きな問題がなくても、胃の動きや刺激の感じ方に問題があり、症状が出ていることがあります。 機能性ディスペプシアでは、胃・十二指腸の運動異常や知覚過敏、胃酸、生活習慣など複数の要因が関係すると考えられています。
こんな症状が続くことがあります
機能性ディスペプシアでよくみられるのは、次のような症状です。
食後に胃が重い、もたれる
少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる
みぞおちが痛む
みぞおちが焼けるような感じがする
もちろん、これらの症状があるからといって、すべてが機能性ディスペプシアというわけではありません。実際の診療では、症状がいつから続いているのか、食事との関係、これまで受けた検査、体重減少の有無などを確認しながら総合的に考えます。
胃カメラに異常がないと、「じゃあストレスですか?」と聞かれることがあります。ストレスや睡眠などが症状に影響することは確かにありますが、それだけで片づけられる病気ではありません。
胃の運動、刺激に対する敏感さ、胃酸、食生活、睡眠など、いくつもの要素が複雑に関係して症状が起こると考えられています。ですので、胃カメラに異常がない=気のせい、ということではありません。
個人的にも、「検査では何もなかったので大丈夫です」で終わってしまうと、患者さんとしては少し困るのではないかと思っています。大きな病気が見つからなかったことはもちろん大切ですが、症状が残っているのであれば、そこから先を考える必要があります。
胃カメラで異常がなければ、もう検査は必要ない?
ここも大切なところです。胃が痛いからといって、原因が必ず胃にあるとは限りません。
症状の経過によっては、ピロリ菌の有無を確認したり、血液検査や腹部超音波検査、CTなどを行ったりすることがあります。特に、体重が減ってきた、嘔吐を繰り返す、発熱があるなどの場合には、機能性ディスペプシアだけと決めつけず、ほかの病気が隠れていないか確認することが重要です。日本消化器病学会の患者向けガイドでも、症状や経過に応じて胃カメラ、ピロリ菌検査、血液検査、超音波検査、腹部CTなどを検討するとされています。
胃カメラで異常がなかったことにも意味があります
「結局、胃カメラをしても原因が分からなかったのなら、検査をした意味がなかったのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
そんなことはありません。胃がんや胃潰瘍など、症状の原因となり得る病気がないことを確認できたからこそ、次に胃の機能の問題などを考えることができます。
診察では私も、「何もありませんでした」というより、「心配な病気は見つかりませんでした。では、次に症状の原因を考えていきましょう」と説明するようにしています。
胃カメラはゴールではなく、原因を考えるためのひとつの手段です。
胃の症状を我慢し続けなくても大丈夫です
胃カメラで異常がなかったため、「病気ではないのだから仕方がない」と胃痛や胃もたれを我慢している方もいらっしゃいます。しかし、機能性ディスペプシアには治療法があり、症状に応じて生活習慣の見直しや胃酸を抑える薬、胃の動きを整える薬などを組み合わせて治療します。日本消化器病学会の診療ガイドラインでも、生活習慣・食事への対応や酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬などが治療項目として取り上げられています。
「胃カメラでは異常なし」と「症状がない」は、同じではありません。
胃痛や胃もたれが続いている方は、以前の胃カメラで異常がなかったとしても、一度消化器内科で相談してみてください。胃カメラをすることだけではなく、検査をしたあとに「では、この症状をどうしていくか」まで考えることも、消化器内科の役割だと思っています。
